次作「鎌倉殿の13人」にも期待している(何を隠そう、私は「三谷大河」のファンである)。
さて、1963年に始まった大河ドラマもかれこれ60年近くになろうとしている。初期の大河ドラマを(大河ドラマという呼び方もなかったはずだが)見ていた人もそれなりの年齢ということだ。私の記憶に残っている初大河はやっと十七作目、1979年の「草燃える」なので古参ファンというわけでもないが、ネット上でたまに「大河ドラマ人気作ランキング」といったものを見かけると「つい最近のばっかりじゃん」と思わざるを得ないのも確かだ。1970年代までの作品はほとんど映像も残っていないものが多く、忘れられていくのは致し方ないのかもしれない。
しかし、テレビ草創期の時代、NHKの連続時代劇にスターを集めることさえ大変だったと聞く。そんなところから現在につながる「大河ドラマ」を確立していった名作・名優たちの功績をできるだけ残しておきたいというのが私の願いである。私自身が生まれる前の話ではあるが、思いつくままに書いてみる。
「草創期大河ドラマ」という場合、10作目の「新平家物語」あたりまでを念頭に置いている。一応、1970年代までの諸作品を列挙しておこう。
タイトル(放送年)/主人公/原作/脚本/主要キャストの順である。
また、映像が残されているかどうかについて、私が知っている(観たことがある)限り、
☆・・・一話現存
★・・・総集編(短。全二回)アリ
★★・・・総集編(長。全五回)アリ
◎・・・全話現存
とした。現在、DVDかオンデマンドで見ることができるもの限定。
☆花の生涯(1963)井伊直弼/舟橋聖一/北条誠/尾上松緑・佐田啓二・淡島千景
☆赤穂浪士(1964)大石内蔵助/大佛次郎/村上元三/長谷川一夫・山田五十鈴・林与一
☆太閤記(1965)豊臣秀吉/吉川英治/茂木草介/緒形拳・高橋幸治
★源義経(1966)源義経/村上元三/村上元三/尾上菊之助(現菊五郎)・緒形拳・藤純子
☆三姉妹(1967)〔架空人物〕/大佛次郎/鈴木尚之/岡田茉莉子・山崎努
☆竜馬がゆく(1968)坂本竜馬/司馬遼太郎/水木洋子/北大路欣也
☆天と地と(1969)上杉謙信/海音寺潮五郎/杉山義法ほか/石坂浩二・高橋幸治
★樅ノ木は残った(1970)原田甲斐/山本周五郎/茂木草介/平幹二朗・吉永小百合
☆春の坂道(1971)柳生宗矩/山岡荘八/杉山義法/中村錦之助
★新平家物語(1972)平清盛/吉川英治/平岩弓枝/仲代達矢
★国盗り物語(1973)斎藤道三・織田信長/司馬遼太郎/大野靖子/平幹二朗・高橋英樹・近藤正臣
★勝海舟(1974)勝海舟/子母澤寛/倉本聰/渡哲也・松方弘樹(主役交代)
★元禄太平記(1975)柳沢吉保・大石内蔵助/南條範夫/小野田勇ほか/石坂浩二・江守徹・竹脇無我
◎風と雲と虹と(1976)平将門・藤原純友/海音寺潮五郎/福田善之/加藤剛・緒形拳
★★花神(1977)大村益次郎/司馬遼太郎/大野靖子/中村梅之助・篠田三郎・中村雅俊
◎黄金の日日(1978)呂宋助左衛門/城山三郎/市川森一/市川染五郎(現松本白鸚)
★★草燃える(1979)源頼朝・北条政子/永井路子/中島丈博/石坂浩二・岩下志麻・松平健
◎獅子の時代(1980)〔架空人物〕/山田太一〔オリジナル作品〕/菅原文太・加藤剛
実を言うと、私が大河ドラマ黄金時代として仰ぎ見ているのはここまで。
視聴率的にこの後ヒット作がいくつも生まれたのは承知している。というかリアルタイムでガッツリ見ていた。ただ、ホームドラマ路線を取り入れたり、良くも悪くも単なる英雄一代記であったり。今から振り返ると、ドラマ作品としての魅力、歴史ドラマとしての深みは正直落ちるように思われる(全てそうだというわけではないし、あくまで個人的な嗜好にもとづく感想)。
歴史観がどうの生き方がどうのと、小難しい理屈が流行らない時代に入ったこともあるのだろう。歴史ドラマではありつつも既存の社会組織における成功・出世、家族的紐帯といった「小文字」の価値観がより濃厚となっていった。・・・だから悪いというのではない。大河は時代を映す鏡だ。
●二代目尾上松緑(1913~1989)
大河ドラマ第一作の主人公が井伊直弼だった、というのもあらためて驚きだが、そのことについては措く。
まだテレビがメディアとして低く見られていた時代、国民的ドラマを作りたいというNHK制作サイドの熱意に応えたのが歌舞伎界の名優・尾上松緑(現在の四代目松緑の祖父)であり、映画界の二枚目スター・佐田啓二(1926~1964)(中井貴一の父)。
舟橋聖一原作「花の生涯」。松緑が井伊直弼を演じ、佐田啓二はその腹心となる長野主膳を演じた。ドラマは原作同様、この二人を中心に淡島千景(1924~2012)演じる村山たかとの三角関係に焦点を当てるものだったようだ(第一話と、終盤の桜田門外の変のシーンのみ現存)。
松緑先生はその後も大河に何度か出演しており、私は1974年の「勝海舟」での勝小吉役が素晴らしいと思う。私が観たのは総集編。
「勝海舟」(1974)~ 勝小吉(尾上松緑)
勝小吉の娘(海舟の妹)お順は佐久間象山の妻となる。ずいぶん歳の差があり、象山には妾もいた。その時の心情吐露。
「勝の小吉はてえした野郎じゃねえ。生涯(しようげえ)てえした野郎じゃなかった。だがね、せめて、深川本所の人達にゃ耄碌した姿を見せたくねえ。力に任せ勝手放題(ほうでえ)言い歩いていたごろつきが、ついには老いぼれて、てめえの娘を親の歳ほどなくだらねえ奴に売っぱらったなんて言われたくねえ」
序盤では小吉がワル侍(悪友?)や目明し相手に腕っぷしの強さを見せる場面もあり、これがまた粋でかっこいい。病み衰え、茶をすする姿にさえ魅せられる。役者自身の中に「江戸」が生きている感じがするのだ。本編を見ることができないのが返す返すも残念。渡哲也(1941~2020)演じる若き海舟(麟太郎)が、幕府に追われる高野長英の著書を持っていたと発覚した時の「公と私」論争は名場面だ。
小吉「おめえは何やったっていい。何やったっていいが、幕臣だということだけは、忘れてもらいたくねえんだ」
麟太郎「父上、公とは徳川一家のことではありません。公とはむしろ徳川を考えず日本国すべてを考えることです」
小吉「そらァ一体どういうこった」
麟太郎「誤解しないで聞いてください」
小吉「誤解はしねえ、だが聞き捨てならねえんだ」
麟太郎「麟太郎は幕臣です。しかしそれ以上に私は、どう言うか、この国の、日本というこの国の人間です。そうなんです。ええ、父上、私は日本人です。日本人ということを、つまり私は…」
脚本の倉本聰(1934~)が松緑先生の楽屋を訪ね、直接拝み倒して出演してもらったと倉本聰のインタビュー記事にあった。それも納得の見事な江戸っ子ぶりだ。総集編であっても、人間国宝・二代目尾上松緑の姿を見ることができる貴重な作品である(この後、1979年の「草燃える」では後白河法皇役。これが最後の大河ドラマ出演となった)。
●滝沢修(1906~2000)宇野重吉(1914~1988)
滝沢修と宇野重吉の二人は、草創期大河ドラマの常連と言っていいほどだ。映画スターのテレビ出演が難しく、テレビのスターもいまだ育っていない時代、新劇俳優たちが大河を支えたということは強調しておきたい。しかし新劇の大御所、と言っても今どれほどの人に通じるのだろうか。
私が凄みを感じるのはやはりその経歴だ。滝沢修も宇野重吉も戦前、治安維持法違反で投獄されている。演劇が国家社会への抵抗と結びついていた二十世紀、バリバリの闘士だった人々である。ともに劇団民藝の創設者。戦後は舞台のみならず映画・テレビでも活躍した。
俳優座の幹部俳優だった東野英治郎(1907~1994)、小沢栄太郎(1909~1988)も治安維持法下の弾圧を経験した左翼演劇人だ。東野英治郎は初代水戸黄門としてあまりにも有名。
世代は下がるが、二代目黄門様こと西村晃(1923~1997)も新劇の人。この人は特攻隊として出撃までしながら生還したという経歴である。三代目の佐野浅夫(1925~)は軍隊に召集されている間に、所属劇団が広島の原爆で壊滅したという。・・・
書き出せばきりがないが、いずれも私が子供の頃、テレビでよく見る顔であった。それだけに、そのギャップというか、戦争と革命(激しい社会運動)という二十世紀の歴史そのものを背負ったかのような役者人生にあらためて衝撃を受ける。あるいは畏敬の念、畏怖を覚えると言ってもいい。
大河ドラマに話を戻そう。
小沢栄太郎は大河ドラマでは「花の生涯」の語りであり、「新平家物語」(1972)の信西入道、「元禄太平記」(1975)の吉良上野介といった憎まれ役がハマりすぎるほどハマっていた(総集編でも確認できる)。
で、滝沢・宇野両御大の大河出演歴である。
「赤穂浪士」1964 滝沢=吉良上野介、宇野=蜘蛛の陣十郎
「源義経」1966 滝沢=藤原秀衡
「三姉妹」1967 滝沢=風の新兵衛
「竜馬がゆく」1968 滝沢=語り
「天と地と」1969 滝沢=長尾為景、宇野=宇佐美定行
「新平家物語」1972 滝沢=後白河法皇
「花神」1977 宇野=緒方洪庵
「黄金の日日」1978 宇野=小西隆佐
「峠の群像」1982 宇野=水戸光圀
人気作となった「赤穂浪士」「天と地と」など、滝沢・宇野が主要キャストとして支えたと言っていいだろう。残念ながらほとんど見ることはできない。
現存する総集編を見て特に印象に残っているのは「新平家物語」の後白河法皇と「花神」の緒方洪庵だ。
「新平家物語」(1972)~後白河法皇(滝沢修)
滝沢修の後白河法皇は気品としたたかさ、腹黒さを兼ね備え絶品。
平家打倒の陰謀、いわゆる鹿ケ谷事件(法皇側近が多数断罪)の後、鎧姿でやってきた清盛(仲代達矢)に言い放つ。
「久しぶりにくつろいで物語りせんと思うたに、暑苦しいものを着込みおるの。そのようなもの脱ぎ去ってまた参れ」
さすがの清盛も絶句。
そして治承三年の政変。清盛は法皇を幽閉、院政を停止する挙に出る。
「宗盛! そもなんの迎えぞ。この身をいずこへ遷(うつ)そうとや。相国(しょうこく=清盛のこと)には院政に益なし、天に二日なしと申したそうじゃが、政を私(まつりごとをわたくし)した覚えはない。さるを!・・・(不敵な笑い)今は何をか言わん。いざ遷せ」
今の大河にはない、文語調の言い回しは吉川英治の原作が活かされている。
それにしても朗々とした台詞回し。すごい貫禄。わずかな瞬間の表情の変化まで自在。天皇関係の役は、歌舞伎など古典芸能系の役者がやるものという先入観を覆す見事さだ(しかもこの人、戦前からの筋金入りの左翼演劇人なのだ。余計なお世話であるが)。俳優座出身の新劇俳優である仲代達矢(1932~)は、滝沢修との共演に一番緊張したと回想している。まさに「新劇の神様」というべき存在だったのだろう。残っている大河出演の映像は少ないが、唸らされる。
「花神」(1977)~緒方洪庵(宇野重吉)
「赤穂浪士」で演じた〈蜘蛛の陣十郎〉という盗賊役の渋い演技が当時評判だったらしく、本当はそれを見てみたいがかなわない。子供の頃、この人に対しても好々爺のイメージを持っていたが、なかなかどうして。山本薩夫監督「金環蝕」では容貌さえ変えて金貸しの男をアク強く演じていたりもする。演出家としても大層厳しい人だったとか。新劇の大御所たちというのは本当に一筋縄ではいかない。それはともかく…
「花神」では中村梅之助(1930~2016)演じる村田蔵六(大村益次郎)の師・緒方洪庵の役で序盤に登場。
適塾に入ってきた若き蔵六に、洪庵がオランダ語の文法書を渡し、穏やかに言う。
「村田さん、ガランマチカです。これを筆写して自分用のを一冊作ってください」
総集編で見ただけであるが、このセリフが妙に記憶に残っている。これが名場面かと言われると困るのだが。「花神」については別途、名場面名セリフをまとめたい。
左翼演劇人が支えた大河ドラマの草創期、などというと嫌がる向きもあるかも知れない。しかし滝沢修・宇野重吉の功績は大河ドラマ史においてきわめて重かつ大であるということははっきり言っておきたい。
実は私自身、長年不思議でもあった。当初から「英雄史観」「権威主義」「支配者の美化」といった一部の批判にさらされてもきた公共放送NHKの大型時代劇(のちに大河ドラマと呼ばれる)に、なぜ滝沢・宇野らが毎年のように出演し、武将や権力者の役を全力で演じたのか。草創期大河ドラマに秘められたもう一つの性格というものがありそうにも思う。だが、本編映像はもとより当事者の発言もほとんど残されていないようである。何を思っても推測・想像の域を出ない。ただ、戦前の皇国史観教育の記憶も生々しかったころ、国民的で大衆的で人間的な歴史物語を創りたいという情熱は制作者にも演者にも共有されていたのではないか。題材がおなじみの英雄物語であろうと、そこに新しい「歴史」を表現することができる、滝沢・宇野らもそう考えていたのではないか。個人的にそんなことを思っている。今、大河ドラマのつくり手の情熱や、如何。
●草創期大河ドラマ常連俳優たち
1965年の「太閤記」でほぼ無名の緒形拳(1937~2008)・高橋幸治(1935~)・石坂浩二(1941~)が起用され、大河ドラマが生んだスターとして成長していく。同時に、1960~70年代の大河にたびたび出演し、脇を固めた俳優たちもいたのである。例えば…
志村喬(1905~1982)
赤穂浪士(1964)小野寺十内 /三姉妹(1967)三沢平左衛門 /天と地と(1969)長尾房景/樅ノ木は残った(1970)里見十左衛門/春の坂道(1971) 青山忠俊/花神(1977) 竹院/黄金の日日(1978) 能登屋平久/獅子の時代(1980)田代栄助
志村喬については以前、「樅ノ木は残った」の記事で触れた。
以下、80年代以降の作品については略。
田村正和(1943~2021)
花の生涯(1963)多田帯刀/赤穂浪士(1964)役不明/太閤記(1965)豊臣秀次/源義経(1966)藤原忠衡/三姉妹(1967)役不明/ 春の坂道(1971)不破伴作/新・平家物語(1972)崇徳院
若き日の田村正和、意外にも草創期大河の常連である。後年の、数々の民放ドラマでも楽しませてもらった。あらためてご冥福をお祈りします。
西村晃
花の生涯(1963)多田一郎 /赤穂浪士(1964)相沢新兵衛/ 三姉妹(1967)えんまの長次/樅ノ木は残った(1970)猿足/春の坂道(1971)河合甚左衛門/国盗り物語(1973)里村紹巴/風と雲と虹と(1976)源護
余談ながら昔、京都太秦の映画村で「水戸黄門」撮影中の西村晃を見たことがある。待ち時間であったが、見物人に顔を向けることもなく、近寄りがたい雰囲気であったことを思い出す。だが彼の経歴を知ると、タレントよろしく人気者然として愛想を振りまくような人ではないということに納得がいく。どんな思いを抱えながらの役者人生であっただろうか。
「水戸黄門」で西村晃を知った私などにとっては、黄門以前の作品を観るのはやや衝撃をともなうのであるが、小心、好色、狡猾、冷酷、さまざまな顔を画面に残した名優。深作欣二監督「北陸代理戦争」(名作!)での親分役なんて、いろんな意味で観ている側がつらくなるほどだ。
芦田伸介(1917~1999)
花の生涯(1963)竹本重太夫/赤穂浪士(1964)小林平七 / 三姉妹(1967) 永井采女/ 新・平家物語(1972)源頼政/元禄太平記(1975)徳川綱吉
やはり「元禄太平記」の将軍綱吉役の印象が強い(これも総集編のみ)。最高権力者の威厳というものがびしびし伝わる、さすがの重量感だ。これは機嫌を損ねたらまずいという気になる(笑)。
主役の柳沢吉保は石坂浩二。水戸光圀がなんと森繁久彌(1913~2009)で、唯一の大河出演である。森繁と芦田の共演というと映画「小説吉田学校」(森谷司郎監督)の吉田茂・鳩山一郎がはまり役だったことを思い出す。あとはTBS正月時代劇「関ケ原」の徳川家康・鳥居元忠主従の別れの場面も素晴らしかった。・・・で、本作の綱吉VS光圀が火花を散らす場面も見応え十分。
「元禄太平記」(1975) 徳川綱吉(芦田伸介)
綱吉の後継をめぐり、幕閣・御三家・大奥が繰り広げる暗闘。水戸光圀は甲府宰相綱豊=後の六代将軍家宣〈木村功(1923~1981)〉を推し、柳沢の前に立ちはだかる。柳沢に焚きつけられた綱吉、怒りをあらわに。
「世継を決めるのは将軍たるこのわしだ。水戸の親父め、さしでたことをする」
柳沢が裏から手を回し、光圀は隠居を余儀なくされる。引退報告に現れた光圀に、嬉しそうな綱吉(笑)。
「出羽(柳沢)、水府(水戸光圀)がの、隠居をするそうじゃ。齢のことを考えれば止めるわけにもゆかぬが、まだまだ余のために働いてもらいたかった。残念に思うぞ」
この後、光圀が延々と嫌味を言い、綱吉がキレそうになる(爆)。「元禄太平記」は基本、忠臣蔵の話だが、前段の権力抗争劇が抜群に面白い。
加藤武(1929~2015)
花の生涯(1963)金子孫二郎 /赤穂浪士(1964)堀部安兵衛/ 源義経(1966)悪七兵衛景清 /三姉妹(1967)村田蔵六/ 天と地と(1969) 長尾俊景 /草燃える(1979年)大庭景親
加藤武といえば、市川崑監督の金田一耕助シリーズで演じた等々力警部でおなじみだが、文学座の重鎮であり、幅広く活躍した名優・文化人であった。
佐藤慶(1928~2010)
太閤記(1965)明智光秀 /三姉妹(1967年)毛谷右京/ 樅ノ木は残った(1970)伊達兵部 /草燃える(1979)比企能員
佐藤慶についても「樅ノ木は残った」の記事で。
内藤武敏(1926~2012)
赤穂浪士(1964)清水一学 /源義経(1966)常陸坊海尊/ 三姉妹(1967)勝安房守(海舟) /天と地と(1969)本条慶秀/ 春の坂道(1971)柳生巌勝/ 元禄太平記(1975)土屋主税 /黄金の日日(1978)明智光秀
1950年代の古い日本映画から平成以降のテレビドラマまで、本当によく見かける名脇役だった。
米倉斉加年(1934~2014)
三姉妹(1967)中村半次郎/ 天と地と(1969)飛加当 /国盗り物語(1973)竹中半兵衛 /勝海舟(1974)佐久間象山 /風と雲と虹と(1976)興世王 / 花神(1977)桂小五郎
1970年代の大河に毎年出ているのではと思われるほどの出演歴。しかもしっかり別人物になりきっている(興世王→桂小五郎の変わりっぷり!)。私は晩年の米倉さんが出演した舞台「ジョン・ガブリエルとよばれた男」(仲代達矢主演)を観たが、仲代さんともどもアドリブ自在、観客へのサービス精神もあって楽しませてもらった。
絵本作家・イラストレーターとしても一流で、絵本「おとなになれなかった弟たちに・・・」は名作。
山口崇(1936~)
源義経(1966)平教経 /三姉妹(1967)三沢半之丞 /天と地と(1969)長尾政景/ 風と雲と虹と (1976)平貞盛
伝説の名作「天下御免」の主演、あるいは「大岡越前」の徳川吉宗。または「クイズタイムショック」の二代目司会。私たち世代にも懐かしい人だ。大河では主人公のライバル、といった立ち位置が非常にはまる人だったようで、「風と雲と虹と」の、平将門と対照的な貴公子・貞盛がやはり代表作だろう。
伊藤孝雄(1937~)
春の坂道(1971) 豊臣秀次 /国盗り物語(1973)顕如/ 勝海舟(1974)武市半平太 /花神(1977) 徳川慶喜/ 草燃える(1979)阿野全成
どんな人物もこの人が演じると説得力がある。脇役としてドラマを引き締める存在感。大河ではないが「真田太平記」(1985)の上杉景勝もよかった。
井上孝雄(1935~1994)
赤穂浪士(1964)礒貝十郎左衛門 /三姉妹(1967)釘宮伊織 /樅ノ木は残った(1970)柚木孝之進/ 勝海舟(1974)松平春嶽
「勝海舟」での松平春嶽役が印象深い。言葉遣いがやたらフランクな(倉本聰の脚本)開明的な殿様を好演していた。早くに亡くなっていたようだ。
井上孝雄と伊藤孝雄、実力派ゆえ、NHKに重宝されたのだろう。登場シーンこそ多くはないが歴史上の重要人物、といった役柄が多かったように思われる。このお二人が出ていると私は「古き良き大河」を感じる。「翔ぶが如く」(1990)では二人そろって出演。井上孝雄が老中・堀田正睦、伊藤孝雄が長野主膳(井伊直弼は神山繁1929~2017)。これぞ大河というべき、実に渋い配役である。
金田龍之介(1928~2009)
赤穂浪士(1964)富森助右衛門 /三姉妹(1967)役不明 /天と地と(1969)柴田勝家 /樅ノ木は残った(1970) 新妻隼人/ 春の坂道(1971) 原三郎左 /国盗り物語(1973)土岐頼芸 /元禄太平記(1975)隆光/ 花神(1977)毛利敬親 /草燃える(1979)北条時政
大河常連俳優の筆頭に挙げられるであろう。どの作品でも強烈なインパクトを残す。「花神」の〈そうせい侯〉毛利敬親はもう、最高である。あとはリアルタイムで見ていた「独眼竜政宗」(1987)の終盤に登場する、大久保長安。 長安が獄中で発狂するシーンなど、いまだに忘れがたい怪演。
やはり新劇畑の人が多い。そして、ほとんどの人が故人だ。仕方のないことではあるが時代の移り変わりというものに感慨を抱かざるを得ない。
わずかに残されている初期大河の映像を見ると、ドラマ作りや映像技術的な面で古さを感じるにしても、俳優の演技には強く引き込まれる。映画や民放の時代劇とはまた一味違う、大河ドラマ的な格調、重厚さといったものがあるとすれば、これら「常連」の演技陣の功績も大きいのではないだろうか。
男性の俳優ばかりになってしまった。本当は、
淡島千景(1924〜2012)
山田五十鈴(1917〜2012)
新珠三千代(1930〜2001)
香川京子(1931〜)
中村玉緒(1939〜)
といった女優陣についても触れなければならないのだが、ここでは名前をあげるにとどめる。
本年はこれまで。
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