過ぎてゆく車窓の向こうはやわらかき春のかがやき水俣の海

 

映画「ミナマタ」を観に行った。

作り手の良心を感じさせられる、いい映画だと思う。社会派映画の常として予算の制約等、厳しい製作条件だったのだろうと推察するが、劇場で私は何度も泣かされた。

実は半分ぐらい真田広之目当てという不真面目な私であるが、その真田広之も素晴らしかった。熊本弁で患者たちの苦しみ、怒りを訥々と訴える住民運動のリーダー。こういう役は珍しい。ユージン・スミス役のジョニー・デップも良かったが、「水俣」というテーマを背負って演じた真田広之の心意気、日本人キャストたちにも拍手を送りたい。

映画のメッセージはストレートだ。「『ミナマタ』は終わっていない」。そして今も、世界中で力なきものたちが命と生活を脅かされ踏み躙られる現実がある。

人間が人間らしくあるとは、人間の尊厳を取り戻すとは。そういうことをあらためて考えさせられた。

私が観たのは街のシネコンで、朝一番の上映ということもあってか客は私一人。ある意味最高の環境ではあったが、この映画が多くの人に観られることを願う。

一首は、コロナ禍の前、九州新幹線に乗った時の光景を詠んだもの。年明け早々であったが、わずかに見えた水俣の海の明るさ、温かさが印象的だった。